無心

無心を感じたんだけど、稽古ではなかったな。トラック乗っててね。は、と気がついたんだよ。凄く静かな気持ちで仕事していたんだ。無心なんてなろうとしてなるものじゃないしな。難行、荒業も要らない。気がついた時にはそんな境地に入っているものだ。俺は今親父、お袋と揉めた状態で一切クチも聞いてないんだけどな。愛情を受けずに育った事だけではなく、死に物狂いで頑張っているのを、手抜きしているとか、人間的に信用できないと言われ続けたことがトラウマになっているんだよ。でもこの機会にそんなトラウマも精算しようと思っているんだよ。残念ながら親父は権力を手にしちゃった人間だからな。権力を捨てた俺には、互いに分かり合う事は不可能だけどさ。自分の道をただ進むだかだからな。それにしても権力を手にした人間というのは一部の人かもしれないが、家族はバラバラになっていくんだよなぁ。哀れだねぇ。俺は長女が反抗して以来、長女だけじゃなく、道場生がみんな自分をさらけ出せるようになってきて、絆は深くなっているよ。