東日本大震災から8年

俺は当時まだ独身だった。治療と道場だけで生活していた時だったけど、たまたま患者さんの予約はなく、午前中は事務的な仕事をこなして、午後に入ったら練習でもしようと思っていた。ぼちぼち居合でもやろうかと思って立ち上がったその時、揺れ始めてね。最初は揺れが止まったら練習をなんて楽観的だったが、揺れが長いわ大きいわ、これはただ事じゃねぇなと思って外に避難した。そうしたら半端ないでかい揺れが来たからね。周りを見たら俺の車は大揺れ、電柱もやばいくらい揺れるし、向かい側の外壁は崩れ落ちる。子供の泣き声も聞こえる。仕事できなくなっちゃうなぁと思ったね。揺れが止まって中に入ったら、中はガチャガチャ。俺、事務室にいなくてよかったよ。足の踏み場もないからな。片付けしようとしたらまた揺れだしてきたからな。また避難した。揺れが止まって、また中に入ったらさらに中は散乱してたよ。道場は3週間は活動できなかった。治療室もすでに予約が入ってた人もしばらくは来なかったし、1週間たってようやく電話が鳴って治療を再開することになったんだよ。5月に入って裕子が治療予約して来た。それが俺との出会いだったな。付き合うことになってもまだ余震が残っててな。その後は超忙しかったよ。休める日なんて年に数回しかなかったんだ。その頃になって、清心流の親方と俺の間にも溝が出来始めてな。周りで揉め始めた時を見計らって独立することにしてた。それから俺は自分の師範としてのあり方を考えたよ。めんどくせぇ輩とは縁を切って、自分の道場なんだからさ、自分らしさを前面に出していこうという事になった。今では楽しくやってるよ。俺らしさだから、バカ丸出しという事になるわな(笑)。損得勘定はどけて考えているよ。だからこそ生活はきついけどな。人とは違う考え、やり方で行くんだ。一般部の大越君には「悪く言えばクセがある」と言われたよ。そういえば2チャンネルにもそんな風に書かれてたなぁ。誰だろう。自分でも気が付かないわけじゃなかったけどな。まぁいいか。今考えてみれば、あの震災がいいきっかけになってるのかもしれない。