若い頃

俺は空手に没頭していたけど、正直言ってあまり良い環境じゃなかった。むしろ劣悪と言っていい。だから心は荒んでケンカの方に逃げる事になったんだ。それこそ希望に満ち溢れた毎日なんて夢のまた夢。お先真っ暗状態でな。当時毎日つけていた日記なんかライバル名指しで必ず殺す!とまで書いていたからな。せめて必ず倒すくらいならなぁと後から思ったけどさ。そのライバルももうこの世にはいない。後からその事実を知った時はショックだったし、一人涙したよ。何を目指したかって?地上最強なんて有り得ないものを追いかけていたんだ。当時沖縄出身の仲間にも沖縄行けばいいのに。そしたらNo. 1ですよって言われたよ。所詮はケンカの話だけど、でもやっぱりそんなもの眼中になかったなぁ。やっとこさウデに自信ついた頃には友達も去って孤独の毎日だからな。虚しさばかりが俺を襲っていたよ。精神まで病んじゃってな。今道場を持つ身として、俺みたいな人間が出ない事に気をつけて稽古つけている。まずは環境。でも今の時代は甘やかす親の中からとにかくラクして強くなろうとする子供が当たり前のように出て来たからな。俺の今までの経験は役に立たないかもしれないな。