コツコツ

俺はコツコツと作業したり練習したりが得意でね。それ以外は向いてないかもしれない。練習も同じ形をコツコツ繰り返す。それがもともと空手の練習には当たり前になっていたんだけどね。今の若い人にはそれがないよな。地道な作業だからな。俺は誰に似たのかなぁ。俺の親父はもともとそんなことしないし、お袋にしてもないなぁ。仕事にしてもタクシーよりトラックの方が性に合うもん。一攫千金なんて考えはもとよりない。いいことがあれば悪いこともあると言うけど、いいこともなければ悪いこともないのが何よりだしさ。不安定な稼ぎより間違いない方を選ぶね。空手道場も不安定な職業と言える。治療室と比べると安定はしてるけど、収入は少ないからいいとは言えないけどさ。ポスティングなんかも俺にとっては向いてるかもね。若い人はなぜやらねぇンだ?俺は若いころから単調な基本稽古を繰り返してきて、いつの間にやらとんでもない力がついてたけどさ。プロレスラーとスパーリングしてて言われたことだが。俺も意識したことなかったんだけどね。単調な作業の繰り返し。目には見えないからねぇ。その点バーベルトレーニングは3か月もすれば体つきが変わってくるけど、空手の基本稽古は何年も年々も目に見えてくる事はないからね。でも、こういう作業をバカにする空手家は結構いるんだよ。つまりはそういうことはやってないわけだろ?辞めた方がいいよ。そんな人間は空手家じゃない。苦しいことは道場生だけに任せておいて自分はふんぞり返ってるならもう師範でもなんでもない。経営者だ。いや、今の経営者は下の労働者と一緒に労働したうえで経営しなければならない時代だよ。この性格が無門会の会長に誤解させたね。俺の事を穏やかで気長な性格だなんてね。人を観る目がなかったなぁ、あの人は。世間知らない人だし。人に何を言われても俺は変わらないよ。これが何よりもいい練習方法だしな。