空手の威力

俺も実際の自分の空手の威力は分からないよ。試しようがないし、ちょっと当てただけで相当痛いしね。ただ、これだけは言えるんだけど、よほど冷静な心でいるうえでもろに相手に当てないと本当の威力なんてありえない。感情的になれば技は鈍る。若いころ喧嘩に明け暮れたけど、感情的になってたんだ。ましてや技そのものも荒かったからね。空手の技とは程遠いね。だからこそ本当の空手の威力なんてわからないよ。刀だって気持ちが静かな状態じゃなければ刀身が鈍って、絶対的に人なんて斬れるものじゃないよ。今の時代、真剣勝負だって法律に触れるんだもん。侍がいた時代だって真剣勝負は簡単じゃなかった。そう考えたら俺が空手で人を殺しちゃうなんてことは絶対的にあり得ないね。空手をやると暴力的になるなんて表面しか見えない人でもこう答えたら分かるんじゃねぇかな。競技に勝つことだって技は冷静さが必要だろう。武道の技は人を殺めてしまうかもしれない技だ。精神面が鍛えられてない空手家が人を殺したとしても空手の技とは程遠いはずだよ。若いころは一撃必殺を追求して、夜も眠れずで稽古しまくったもんだよ。一撃必殺とまではいかないが、一撃必不無事くらいは習得してるが、今は人対人にこだわることはないからさ。今、俺の今の精神状態で考えると、今の若い人に俺の真似はしてほしくないもんだ。時代は違う。武道も強さが求められるわけでもないしさ。今の若い子なら俺の真似をしたら確実に死んじゃうよ。その点、昔は本来の武道からすればひどい道場は当たり前にあった。