環境

俺は道場生、特に少年部を育成するにあたっては環境を意識するよ。今はどうか分からないけど、俺が昔所属していた無門会は目先の勝ち負けを意識しすぎてた会だった。おまけに命のやり取りレベルでみていたから、研究生に入った時は環境は劣悪だった。命のやり取りに勝つ事だけを考えるならそれでいいけどな。若者が獣みてえに殺気だっていたら周りの人間は相手にしないよ。社会では爪弾きにされちゃう。俺は親から愛情も受けずに入っちゃったもんだからな。無門会の研究生は世間知らずの若者の集まりだったよ。修行には欠かせない苦しみは絶対的に必要だよ。当時はそれだけしかなかったなぁ。楽しさもあったが恐怖の道場だった。今当時を思い出すと怖くなってくるよ。よくあんな若造でやっていけたもんだよ。生きてるのが不思議だもん。こんな話はしまっておくより話してしまった方が気持ちが楽だし、今時の人では味わえない貴重な経験となってるから今では楽しい思い出だけどさ。子供が稽古しやすい環境。環境が悪くてはまともな人間は育たない。裕子は子供の話を聞く事を欠かさない。俺がそこで決断する。今はそうやって成り立っている。