達人の組手

尤も達人が組手なんてやる必要性なんかないもんだけどな。空手には組手が今や必須どころかその為の空手になりつつあるからな。実際空手に組手というものは無くていいもので、やったとしてもあくまで上達するための過程として存在するものだしな。間合いを確認する意味では俺もやるけどさ。もし本当に達人が相手を倒すなら、技なんて要らないものだ。相手がいて相手も自分を倒しに来るからお互いがスキをつくために技が出てくるんだけど、達人には技は要らないというのは気持ち的に既に違うんだよ。殺気なんかないんだからさ。相手も何を考えてるか読めず、懐に入られて打たれちゃうんだよ。俺は無門会に所属していた時には会長が間合い捕りをやっていたのをしっかりとアタマに刻んでいたからな。無門会を去っても忘れるもんじゃなかったよ。それから組手をしてると身体が思い出すもんでね。以前、熊田道場に門外の人間が挑戦して来た時に使ったよ。道場破りってやつだけど、今では考えられない事だ。怪我させようものなら、警察に変にチクられちゃうしな。その間合い捕りは緩めれば総合格闘技に応用できるよ。案外黒帯連中ですら理解できないのが現状だけどさ。グレイシー柔術のヒクソン氏はやってるよ。