俺がもし空手の試合に出たら…

尤も試合に出たいなんて全然思わないけどさ。そもそも向いてねぇもん。高校時代には反則負けだもんなぁ。まぁ年数を経て空手歴も33年になる。技も覚えたよ。組手の技も身に着けてきたよ。ただ、組手の技は時代とともに使えなくなってくるんだよ。組手は時代とともに変化してるから。プロレスだって同様だ。ただ、俺が試合に出ても技なんか関係ないよ。勝ち負けも関係ない。ただ暴れるだけだよ、たぶんね。こういう気質は昔も今も変わってないと思うよ。一発いいのをもらったら逆上して追い掛け回すなんてことをしてたしなぁ。今はそんなことないけどさ。たぶん試合となればそんな本性が出ちゃうと思うよ。尤も俺には試合用の技なんて眼中にねぇしな。実戦的な技なら興味もつけどさ。試合じゃ使えない技だぞ。人を殺しかねない技もある。ただこういう技って、感情的になってできるもんじゃないからさ。暴力的な意味では到底使えないよ。よっぽど冷静さがないとな。刀で人なんて斬ったことないけど、あれだって感情的になって斬れるもんじゃないんだよ。気持ちは静かでなければ斬れるようにならない。その時点で空手をやると暴力的になるっていう考えは全く持って的外れだ。俺が人間を磨くために空手をやってるんだって言っても信じようとしねぇ人がいるけどさ。それは見る目がないぞ。空手だって精神的にも肉体的にも健康にならなければ武道じゃない。心身が荒れる。そんなものやらないよ。むしろ自分の持つ野獣性を押さえつけるものが武道だよ。ただ、若い人は試合に出て頑張ってほしいねぇ。試合がすべてだと勘違いされても困るけどさ。空手人生という長い目で見たら試合というのもいい過程だ。