居合と無門会

居合の稽古中、人と立ち会ってる心境になる。真剣を握って稽古するだけでこの緊張感だからね。本当に人が斬りかかってくるんじゃないかって考えちゃうくらいだ。こっちは相手を想定し、殺気を感じたら刀を抜くつもりでいるんだけど、一向に殺気なんか感じない。そりゃそうだ。実際相手なんかいないんだからな。無門会会長は山籠もり時代、浮かんでくる相手と対峙して、相手が攻撃してきたところを受即攻してきたと言うけどな。この違いなんだろうね。人との戦いに固執している人とそれにこだわらない人間との違いなのかね。気が研ぎ澄まされるのは一緒だろう、おそらくは。会長はその点、かわいそうな人生を送ってるところがあるからな。あの人のことを悪く言う人がいるけど、俺は実際あの人の近くにいたから分かるから言うよ。半端なく強い人だったよ。独自の理論を持ってるけど、それを捨ててかかったら間違いなく最強だった。会長の背後からそーっと近づいても必ず気づかれる。それは他の弟子も同じことを言っていた。渓流の泳いでるヤマメを手づかみなんて、批判する人たちはできますか?言い方を変えればそんな察知の仕方ができるんだから、どんな人も信用できなかったのかな。今では変わってるだろうけど、会ってみたい気もするね。