少年部の一人が…

確かに覚えの悪い子だよ。形も一つ覚えるのに苦労したもんよ。しばらくすると少し忘れちゃったりするしさ。でも、頑張ってるよ。この子がね、学校の担任に、覚えが悪いことで障害があるんじゃないかっていわれてるんだよ。確かに弟は自閉症の障害があってね。うちで無償で預かっている。でもね、自分の判断基準で簡単に障害があるんじゃないかっていうのはあまりに暴言。公務員は勝手に自分の判断で障害者扱いしたりするけど、それを言ったら覚え方なんて千差万別だし、障害者と名前がついていても理性がほかの子と比べて発育が遅いだけで、元々人間なんて動物だもん、理性より本能が先に出ていてもおかしくないわけでさ。先日もアスペルガー症候群の子が空手体験に来てね。結局練習はやらなかったけど、冷静に自分なりに観察しているのが分かったよ。父兄はこれだけで感動してたよ。じっくり時間をかけていく必要はあるだろうよ。そういう子にはね。でも、それで勝手に障害者のレッテルをはっちゃうのは公務員の悪い所。「あんたらだって元々は動物。理性なんて後からくっついてきたものにだけ振り回されてる、あんたらの方が障害者なんじゃねぇの?」こういう父兄の感情の言葉を俺はよく聞く。確か運動会に順位をきめなくなったのは差別しちゃいけないからだろ?だったら障害者だなんて差別するなよ。俺なら障害者クラスなんて作る気はないね。一緒に稽古させるよ。やらなくてもいい。見ているだけでも道場の緊張感は違うもんだ。そういうのを感じるだけで成長は違うぞ。現にその弟君はいつも道場に来たがってるよ。